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1998/6/2 13:30 -, at 九大理学部3号館 6階 3631

ゼブラフィッシュ網膜上の錐体モザイク形成

九州大学理学部生物学科 遠矢 周作

魚類の網膜上では異なる波長(青,紫外線,緑,赤)に感度のピークをもつ4種類の錐体細胞が,規則正しく並んだモザイクパターンをつくる.たとえばゼブラフィッシュの錐体モザイクでは正方格子上に4種の錐体細胞が規則正しく配置されている.このような規則正しいパターンをつくるメカニズムについて多くの分子生物学的アプローチがなされていが,まだ明らかではない.
未分化の細胞が隣接する細胞と相互作用しながら分化,脱分化を繰り返し最終的にそのような規則正しい配列を形成する,という仮説に基づいた数理モデルを解析した.緑感受性と赤感受性の錐体細胞のペアからなるdouble coneをひとつのユニットと考えることで,局所相互作用のみで規則的パターンが安定に再現できることを確かめた.またパターンが規則的であるためには,細胞間の相互作用のパラメータが特定の関係を満たす必要があることを確かめた.

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1998/7/2 15:00 -, at 九大理学部3号館 6階 3631

イシサンゴにおける種内接触:成熟サイズ・齢の可塑性/h1>
九州大学理学部生物学科 酒井 一彦

本研究では、塊状の群体性イシサンゴ、パリカメノコキクメイシの野外個体群の調査結果をもとに、種内接触(同種他群体との接触)が生活史形質に及ぼす影響を明らかにした。
パリカメノコキクメイシは雌雄同体で、種内接触のない場合にはポリプ数60(推定年令6歳)で成熟する。調査域では個体群密度が高く(85/・)、集中分布し、群体の56%が種内接触していた。一般にサンゴは種内および種間接触で一方が他方を部分的に殺すが、本種は種内接触により互いに傷つくことがない。種内接触により小さい群体の成長率が低下し、生存率が上昇し、より小さくかつ若く成熟した。種内接触のない場合の成熟サイズと齢の進化には、成熟前に繁殖に投資せず成長し、大きい群体サイズとなり配偶子生産量を増やすことが最も重要であり、大きくなって死亡率が下がることの重要性はより低いと考えられた。したがって種内接触により成長率が低下することが、成熟サイズ・齢の進化にとって最も重要であると考えられる。 個体群と繁殖のデータより構築した静的生命表は、種内接触した場合の適応度がしない場合よりも低いことを示した。このことからパリカメノコキクメイシでは種内接触をより頻繁に起こすように進化したのではなく、個体群密度が高いことによって起こる種内接触条件下でのBBSが進化したと結論する。