数理生物学研究室イメージイラスト
1998/7/6 13:30 -, at 九大理学部3号館 6階 3631

筋肉横紋筋におけるアクチンフィラメントとミオシンフィラメント間の周期の一致と相互作用モデルおよびそれを基にした幾つかの予測

佐世保高専・物質工学 野坂 通子

アクチンフィラメント(AF)とミオシンフィラメント(MF)の相互作用メカニズムの解明は、効率の良いエネルギー変換系を開発してゆく上で重要な手がかりとなる。近年、分子レベルの滑り運動が直接観察できるようになリ、複数の研究者によって、ATP当たりやパワーストローク当たりの滑り距離が実験から推定され報告された。これらの推定値は互いに一致するには程遠く、その原因は上記二種類の滑り距離を区別せずに議論されている点である事を学会等で指摘してきた。一方、アクチン分子とミオシン分子の立体構造が解明された。各分子を構造解析して得られるパワーストローク当たりの滑り距離予測値は、各々の分子が持つ潜在的に可能な運動能力であると考える。実際の相互作用では(協調性の代償として)運動が制限されるであろう。それでは、何が制御しているのだろうか?
少なくとも、相互作用点の空間的な配置が、協調性を実現しその運動を制限すると考えて二つのフィラメント構造を解析した結果、周期の幾何学的な一致を発見した。 一致する周期を各々の相互作用の一単位と見做して相互作用モデルを考え、幾つかの物性を数値として予測した。AFのねじれ度は二つの実験結果と一致する。パワーストローク当たりの滑り距離は四つの可能性が考えられたが、それらはアクチン1分子や実験により推定された値と一致したものを含む。一致する予測値について実験条件との対応、生体内での実現性等を議論したい。更に、パワーストロークに対応する加速度も示唆された。幾つかの学会で発表してはいるが、論文となっていないこの話の矛盾点の指摘やアドバイス等を頂きたいと思っています。