1998/6/2
13:30 -, at 九大理学部3号館 6階 3631
ミューラー型擬態における羽パターンの境界線の移動スピードの計測
九州大学理学部生物学科
川口 勇生
亜熱帯性のチョウHeliconius eratoとH.melpomeneはミューラー型擬態の関係にある。ミューラー型擬態とは味のまずい種同士が互いに似通ってくるというような擬態で、同じ地域に同じ羽の模様の種類がいるというような、平行的な地理分布をしている。本研究ではこの地理分布に注目し この羽のパターンの境界線の移動のスピードについて調べた。 (1)羽の模様のパターンがA・B2種類あるチョウを仮定して、捕食者はチョウを食べるとまずいと思い、まずさの度合いによって羽の模様を覚えるとする。つまりチョウは同じ羽の模様を持ったものが多いと死ににくくなる。Aパターンの羽の模様を持っている種の頻度をpとして、チョウが1種で1次元上にいるとき拡散方程式を用いて羽パターンの移動スピードを計測した。この拡散方程式は従来のFisher型ともう一つ別のBarton型の2つの進行波のスピードを持っており、またこの拡散方程式を直接シミュレーションした値は方程式の二つのスピードが接する点で乗り換えが起こることを示した。 (2)1次元の格子上に2種のチョウがそれぞれ2つの羽パターンを持っているとして、ある場所から左はAパターンを、右にはBパターンを固めて並べた場合のパターンの境界線の移動スピードを解析した。解析的に得られた式と、シミュレーション値はよく一致しており、これらは2種の羽の模様のパターンの類似性が高いほど境界線の移動スピードは遅くなることがわかった。