数理生物学研究室イメージイラスト
1998/10/1 13:30 -, at 九大理学部3号館 6階 3631

パッチ状環境で餌をめぐって競争する2種の捕食者の共存可能性

大阪女子大学・学芸・基礎理 難波 利幸

ロジスティック成長をする被食者と,HollingのII型(飽和型)の機能の反応をもつ 2種の捕食者を考える。これは,間接競争をする2種の捕食者のモデルであり,Hsu, Hubbell,and Waltman(1978)の研究により,餌密度が低い場合と高い場合とで2種の捕食者の成長率が逆転するならば,2種の捕食者が振動状態で共存できる場合があることが分かっている。二つのパッチからなる環境で,この系に捕食者の拡散型の移動を導入する。被食者の環境収容力と捕食者の拡散係数を残し,他のパラメータは,餌密度が低いときは捕食者Pが有利,高いときは捕食者Qが有利となる値に固定する。移動がないとき,被食者の環境収容力Kが大きくなるにつれ,Qが絶滅してPが生き残る安定平衡状態,Qが絶滅してPが残る安定周期解,2種共存の安定周期解,Pが絶滅してQだけが生 き残る安定周期解が現れる。Kが小さなパッチは,孤立しているときにはQが存続できないのでQにとってはsinkとなり,Kが大きなパッチは,QにとってはsourceであるがPにとってsinkとなる。拡散係数を適当に選べば,パッチの一方または双方がsinkであって,移動なしには共存できない場合でも,2種の捕食者の共存が可能となることを示し,Lotka-Volter ra型の競争やメタ個体群モデルとの関係を考える。