環境の空間異質性が種の共存に及ぼす影響
生息地によって永続的な環境の違いがある場合、2種が共存する条件をロッタリーモデルを用いて求めた。生息地(habitat)が幾つかあり、各々の生息地における生息場所(site)は成体により完全に占められている状況を考える。各生息地の成体は毎年幼生を生産し、それらは完全に混ざり合い一つの幼生プールをつくる。各生息地において、成体が死亡することで空いた生息場所は、幼生プールからランダムに選ばれた種の幼生が着底することで埋められる。ここで、成体の幼生生産率と死亡率は、種及び生息地によって異なるとする。
以上の仮定をふまえたモデルを解析し、次のような結果を得た。
(1)生息地がn個ある場合、平衡状態は、一方の種が全ての生息地を埋める状態(single-species equilibrium)に加えて、二種が共存する状態(coexistence equilibrium)がn-1個存在する。
(2)共存平衡点の位置、及びその安定性は同一の関数により求めることが出来る。この関数は、2種の適応度の差と理解することが出来る。
(3)共存平衡点が存在するためには、二種の死亡率の比が生息地ごとに異なることが必要である。また各生息地において二種の幼生生産率が共通ならば、共存平衡点は一つだけ存在し、それは大域安定である。
本セミナーでは解析手法を中心に、環境の空間異質性とsotf selection, hard selectionとの関係、及び環境の時間変動に注目したロッタリーモデル(Chesson and Warner1981)との比較などを発表する。