疫学パラメーターが病原体の系統樹に与える影響について(YSSPへのいざない)
分子生物学的手法の発達により、現在様々な病原体の系統樹が作成されている。例え
ばデングウイルスは4つの異なる抗原亜型が初期の段階で大きく分かれ現在にいたる
ような系統樹を持っており、また、インフルエンザウイルスは1つの大きい幹から毎
年違う系統が供給されているような系統樹を持つ。病原体の系統樹はそれぞれが特徴
的な形をしており、また病原体はそれぞれ固有の疫学パラメーターを持つ。本研究で
は疫学パラメーターが系統樹に与える影響について、疫学動態モデルの基本モデルで
あるSIRモデルを多種系に拡張し、研究を行った。
病原体の系統はそれぞれ抗原決定部位の配列によって決まるとし、宿主は病原体の系
統に対してそれぞれ、感受性、感染、回復の3状態を取るとする。多重感染に対しては、
交差免疫が抗原配列の相同性に応じて働くとする。本セミナーでは、感染率、回復率、
病気による死亡率の3つのパラメーターを変えたときに、どのような系統樹がえられ
るのかを、個体ベースのシミュレーションにより示す。また、統計量を用いて、系統樹
の形を議論する。
本セミナーは、今年の6月から8月にかけて行われた、IIASA (International
Institute for Applied System Analysis, Austria)におけるYoung Scientist
Summer Programにおいて、Ulf
Dieckmannとの共同研究によるもので、YSSP参加記を織り交ぜながら行う予定である。