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2002/09/07 13:30 -, at Room 3631

数理的手法による発生生物学

基礎生物学研究所 望月 敦史

これまで、「発生生物学における数理的手法」にこだわって研究してきた。これまで の成果と現在進めている研究を簡単に紹介し、この手法の将来の可能性について議論 する。特に表題に掲げたように、「発生生物学研究の1手法としての応用数理」とい う位置づけが可能となりうるか、考えてみたい。具体例として以下を取り上げる。

(1)魚類網膜の錐体モザイクパターンの形成
ある種の魚類では、異なる光感受性を持つ複数種の錐体細胞(B、U、G、R)が網膜上 で周期的に現れ正方格子状に配列する。この形態形成に関しては、各種の錐体が分化 する際に空間的制御を受ける可能性と、形態形成において細胞が移動する可能性がそ れぞれ実験から示唆されている。我々はこれまでに格子モデ ルを解析し、細胞分化及び細胞再配列のいずれの可能性においてもこの配列が生成し うることを示し、形成の為の細胞間相互作用の条件を導いた。しかし格子モデルでは 細胞はあらかじめ正方格子状に配置しており、細胞移動はその制約下で起こると仮定 していた。
今回、細胞が連続平面上を自由に移動できるモデルを考え解析した。その結果モザイ ク配列を維持する為にも、格子モデルにより得られた条件を細胞間接着力が満たすこ とが必要だと分かった。この結果より、現実の錐体細胞においても細胞間接着力の制 御がなされているはずだと予測する。

(2)遺伝子ネットワークの持つ性質
遺伝子発現制御は、タンパク間の複雑な相互作用によってなされている。転写調節領 域では、様々なタンパク質の存在状態に対して発現状態が切り替わるような、いわば 論理計算がなされると考えられている。遺伝子発現のスイッチングを取り込んだ、タ ンパク質とmRNAの常微分方程式系を考え、遺伝子ネットワークの持つ性質について研 究を行っている。