SIRモデルと周期とカオスの最先端-スコットランドの紹介もかねて-
当講演の演者は昨年スコットランドのスターリング大学に滞在した。そこで、本発表
では、まずスコットランドの生活を紹介し、そしてそこで行った研究を報告する。
スコットランドのイメージとは、男性のスカートにバグパイプ、ネス湖のネッシー
にそしてウィスキー。これらは、すでに昔のことと思われがちだが、ネッシーを除く
すべては今でも日常生活の中にあふれている。最初はひどく違和感を感じたが、次第
に慣れた。もっとも、きついスコッティッシュ訛りの英語は最後まで悩まされたが。
スターリング大学は60年代にできたイギリスのなかでは極めて新しい大学である。
それぞれの学部は小規模で教官の数もそれほど多くはない。しかしながら、学部、学
科間の交流が非常に盛んで、必要な時に必要な人と議論ができるという望ましい環境
であった。
演者は生物学科に所属していたが、仕事は主に数学科教授、ジョン・グリーンマン
博士と共同研究を行った。
SIRモデルとは感受性個体(S)、感染個体(I)、回復個体(R)の密度を追いかける微分
方程式である。その動態は、季節変動を伴う場合、変動の強さにより様々な周期が現
れる事が知られている。
出現する周期には、良く知られているように、n年、2n年、4n年・・・というカオ
スへと向かう分岐により生じる物もあるし、n年、(n+1)年、(n+2)年・・・と変動の
上昇に伴い順次生じてゆく物もある(ただし、n、は正の整数)。しかも、これら二
様に生じる周期は同じ変動のもとで共存しシミュレーションの初期値に依存してどち
らかへと収束する。変動の強いところでは、前者により現れるカオス的周期と後者に
より現れる比較的短い周期が共存するが(つまり初期値によりカオスになったりn年
周期になったりする)、新たに(n+1)年周期が現れた時にカオス周期が不安点にな
る、つまりカオスの窓が生じることがわかった。
季節変動(つまり系に導入される外部強制振動)の周期と感染者密度の変動幅、つ
まり振幅の関係を、非線形振り子を参考にしながら解析を行ったので、合わせて報告
する。
スコットランドってどんなところ?、と思ってる人の来聴も歓迎します。