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2023/10/17 13:30 -, at W1-C-909

Branching architecture affects genetic diversity within an individual tree 樹木の樹形構造と個体内の遺伝的多様性

九州大学大学院システム生命科学府 富本創

樹木の生長で樹形が形成される過程では、体細胞変異が確率的に生じる。結果、枝ごとに異なるゲノムをもつ遺伝的に多様な個体が形づくられる。こうした体細胞変異は種子へと受け継がれ、集団の遺伝的多様性へ寄与する。しかし樹木の樹形構造が、個体内の遺伝的多様性にどの様に影響するのか分かっていない。この研究では数理モデルにより、この関係を明らかにした。
モデルでは1つの枝(母枝)の先から、2つの新しい娘枝(主枝と側枝)が生じる二叉分枝の樹形を考えた。そして、母枝と娘枝の長さの比(DM)と主枝と側枝の比 (ML)の 2 つのパラメータを変化させることで、異なる樹形を生成した。さらに枝先の茎頂分裂組織(SAM) の幹細胞に注目し、枝の伸長に伴って体細胞変異が各細胞系列に蓄積する過程をモデル化した。個体内の遺伝的多様性の指標として、まず二つの枝間の遺伝的距離を計算し、それをすべての枝で平均した値(Z)によって評価した。そして枝の全長を一定に保ちながらDMとMLを変化させ、Zが異なる樹形のもとでどのように変わるのか調べた。
結果、SAM内の幹細胞系列が1つの場合、DMが小さく枝間の距離が短い樹形で、Zは減少した。幹細胞系列が複数の場合、Zは増加した。一方、いずれの場合でもMLが大きく頂芽優勢の強い樹形ではZは増加した。個体内の遺伝的多様性は、SAM内の幹細胞系列数との相互作用の下で、樹形構造によって大きく異なった。この結果は、樹木が遺伝的多様性を保つ上で、樹形の重要性を示唆する。