2025/11/26
16:30 -, at W1-C-909
数理モデルで読み解く進化と多様化のメカニズム
北海道大学
山口 諒
「生命のテープを巻き戻したら、進化は同じ道筋を辿るだろうか?」この問いは、進化の予測可能性という根本的な科学的課題を提起する。本講演では、遺伝子頻度の変化から新種の誕生、そして生物多様性パターンの形成まで、異なる時空間スケールにおける進化現象の理解と予測可能性を、数理モデルの側面から考察する。まず、遺伝子レベルで自然淘汰が追跡可能な複数の事例を紹介し、長期進化実験のデータと理論予測の比較を通じて、進化における決定論的プロセスと確率的プロセスのバランスを紹介する。次に、環境適応のシナリオが新種の誕生速度に与える影響を示し、絶滅リスクが種分化を促進する可能性を議論する。さらに、ミクロな進化プロセスと近縁種間の共存の繰り返しによる多様性パターンの創出メカニズムを探り、どのような特徴を持つ分類群が最も高い種多様性を示すか、実証例と照合する。進化の予測にはさまざまな確率性が関与する一方で、環境適応や個体群動態によってその後の進化経路は制約されうることを示す。多様な進化シナリオの背景にあるメカニズムの理解を通じて、その予測可能性と限界を議論したい。